小細胞がんは、発見時にはすでに転移していることが多く、遠隔転移(脳や骨、肝臓、副腎、がん性胸水など:進展型と呼ばれる)がある場合は、抗がん剤治療を行い、遠隔転移がない(胸の中のリンパ節転移までに留まっている:限局型と呼ばれる)場合は、抗がん剤と胸部放射線照射の組合せが用いられます。抗がん剤はシスプラチンという強力な抗がん剤と、イリノテカンまたはエトポシドを組み合わせた2剤併用療法が用いられます。限局型では胸部に1日2回、週5日間で3週間放射線照射し、同時にシスプラチンとエトポシドを併用する抗がん剤治療を行います。抗がん剤治療は3週間〜4週間を一つの単位(1サイクルまたは1コース)として4回繰り返します。
非小細胞癌は、IA期では手術のみ、IB期から手術可能なIIIB期までは手術後に抗がん剤治療を組み合わせるのが一般的です。最近では負担が軽い胸腔鏡(内視鏡)による手術も広く行われています。何らかの理由で手術ができない場合も、早期であれば粒子線治療や定位放射線照射で手術並みに治すことが可能です。手術が不可能なIIIA、IIIB期では胸部放射線照射(1日1回、週5日間を6週間照射)と抗がん剤2剤を組合せた併用療法を行います。放射線照射ができないIIIB期、IV期では抗がん剤治療を行います。
最近、薬による治療を行う際は、非小細胞がんでは、扁平上皮がんと非扁平上皮がんに分けて、より効果的で安全な薬を用いるよう医師が判断しています。しかし、進行肺がんについては、現時点では、治る方の割合は多いものではありません。近年、分子標的治療薬と呼ばれる新しい薬が開発され、人によっては劇的な腫瘍縮小効果と延命効果が得られています。東洋人、女性、非喫煙者、腺がんの方に効果が現れやすいことがわかっていまが、さらに肺がん細胞の遺伝子検査で遺伝子変異のある方に効果がみられることも分ってきました。ゲフィチニブやエルロチニブと呼ばれる分子標的薬は、あるタイプのEGFR遺伝子変異が陽性の方では高い効果が認められています。さらにEGFR遺伝子変異が陰性であっても、EML-ALK遺伝子変異が陽性の場合は、クリゾチニブと呼ばれる分子標的薬が高い効果を示しています。一方、これらの分子標的薬は、喫煙者、扁平上皮がん、男性では効果が乏しく、間質性肺炎の副作用がでやすいことが知られています。喫煙者は肺がんになりやすいだけでなく、薬が効きにくい、副作用がでやすいといった不利な状況が確認されています。喫煙は、肺がんの発生に強く関与することが証明されており、現在、最も重要な肺がんの予防対策は禁煙の徹底です。いずれにしても、喫煙は今すぐ止めることが推奨されます。