睡眠時無呼吸症候群
平成15年山陽新幹線の運転手さんが居眠りで岡山駅を通過してしまったことで広く知られるようになりました。睡眠時無呼吸症候群 Sleep apnea
syndrome(SAS)は眠気だけの問題ではなく、高血圧、脳卒中、心疾患、糖尿病などの生活習慣病の原因と考えられています。睡眠時に生じるストレスで交感神経が刺激されることで、生活習慣病を引き起こします。潜在的に日本に200万人の患者さんがいると推測されています。
睡眠時無呼吸症候群の症状
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、夜間に繰り返し起こる無呼吸・低呼吸により、血液中の酸素が低下したり、頻繁に中途覚醒が発生したりすることで、身体にさまざまな悪影響をおよぼす病気です。下記の自覚があれば疑います
- いびきをかく
- 睡眠中に呼吸が止まる、息苦しさを感じる
- 夜中に目が覚める、寝付きが悪い
- 何度もトイレに起きる
- 寝汗をかく・寝相が悪い
- 熟睡感がない
- 倦怠感・頭痛
- 日中の強い眠気
- 集中力・記憶力の低下
- 抑うつ状態(やる気が出ない、イライラなど)
- 性的欲求の低下
- ED(勃起機能不全)
睡眠時無呼吸症候群合併症
- 高血圧
- SAS患者の約50%は高血圧を合併しているといわれるほど、高血圧はSASの合併症として有名です。自覚症状がほとんどないため、高血圧と気づいていない人も多く注意が必要です。
- 糖尿病
- 習慣的にいびきをかく人は、糖尿病のリスクが2倍になるという報告もあり、睡眠時無呼吸症候群と糖尿病は関連が深いことが知られています。糖尿病は、インスリンがうまく働かないためにブドウ糖が細胞に取り込まれず、血糖値が上がってしまう病気です。無呼吸によって低酸素状態になると、結果としてインスリンの動きが悪くなり糖尿病に関連することがわかっています。SASの重症度が高いほど、糖尿病の合併率が高まるというデータもあります。
- 虚血性心疾患、不整脈、心不全
- 心血管疾患は、睡眠時無呼吸症候群と関連が強い合併症です。睡眠中の無呼吸は、血圧に大きな変動を与えたり、血液が固まりやすい状態を作ったりします。それにより、血圧の上昇、心臓の肥大や不整脈、心筋梗塞など多くの問題を引き起こしてしまいます。また、SASを合併している心不全患者は、SASの治療をしないと死亡率が高くなるといわれています。
- 脳血管障害
- 海外の研究では、睡眠時無呼吸症候群の患者は、健常者と比べて脳卒中の発症リスクが約3倍高まることが明らかになっているほど、これらの病気との関連が高いことも報告されています。
- メタボリックシンドローム
- 中等症の睡眠時無呼吸症候群患者(男性)の約半数にメタボリックシンドローム(メタボリック症候群)の合併が、また、メタボリックシンドロームの男性の半数弱には中等症以上のSASの合併が見られます。それほどに、この2つは関連性が高いのです。肥満は、睡眠時無呼吸症候群の原因のひとつになります。また、メタボリックシンドロームの患者は、脂質異常や高血圧なども併発しているため、そこにSASが加わることで心血管疾患など(心筋梗塞や脳梗塞など)の病気のリスクを高めてしまいます。
- 発育障害
- 睡眠時無呼吸症候群は、成人だけの病気ではありません。子どもにもみられる病気で、小児全体の1〜4%はSASであるといわれています。SASを放置しておくと、発育障害、学力低下、注意散漫など子どもの発達に影響するおそれもあります。小児SASの特徴として、胸の正面の胸骨がへこむ漏斗胸(ろうときょう)や胸骨が突出する鳩胸の胸郭変形があります。
- その他の合併症
- 慢性腎臓病
- 動脈硬化
- 心臓突然死
- 胃食道逆流症
- 非アルコール性脂肪肝疾患
- 周術期管理
- 認知症
- うつ病
- 不妊症、流産
- ED(勃起障害)
- むずむず脚症候群
分類
- 中枢型・・・肺、胸郭、呼吸筋、末梢神経に異常がなく、中枢神経系の疾患により呼吸制御系が障害された場合や、呼吸中枢の機能異常により、REM期を中心とした睡眠中に、呼吸筋への刺激が消失して無呼吸となります。脳疾患患者や心不全患者に高率にみられる異常呼吸(チェーンストークス呼吸)は、中枢型に分類されます。
- 閉塞型・・胸部や腹部の呼吸運動は行われているにもかかわらず、上気道の閉塞のために鼻、口での呼吸がなく無呼吸となるものです。呼吸再開時に、大きないびきを伴うのが特徴です。1つの無呼吸が中枢型で始まり、後半に閉塞型に移行する混合型睡眠時無呼吸は、閉塞型の一部と考えられています。半数以上が閉塞型です。
診断
簡易検査装置をお貸ししますのでご自宅で装着し一晩寝ていただき、翌日ご返却ください。装置本体はタバコの箱の半分程度の大きさで、センサーを指と鼻に装着します。この簡易検査で無呼吸低呼吸指数AHI(1時間あたりの呼吸停止回数)が計測され、AHIが既定の数値以上であれば診断確定しこれで検査が終了します。(左の写真) もしAHIが既定の数値以下ならポリソムノグラフィー(PSG)による精密検査を追加する必要があります(右の写真)。PSGは1泊入院で行う方法と、ご自宅で行う方法があります。